サブコントラバスリコーダー(ペツォルト)
箱型リコーダーで有名なペツォルトのサブコントラバスリコーダー489DBです。
ご縁あって、さる高名な指揮者の方が所有されているこの楽器を、すぎやまが数ヶ月お預かりすることになりました(2024年5月現在)。
持ち主のご許可をいただきましたので、レビュー記事を掲載します。
サブコントラバスリコーダーは、コントラバスリコーダーよりも1オクターブ低い音を出す楽器です。音域が低い分、本体は太く、長くなります。
海外には、直管パイプ形状に作られたサブコントラバスリコーダーも存在するのですが、その楽器は全高が3メートル半〜4メートルにもなり、とても一般家庭に収納できる大きさではありません。
その点、このペツォルトの楽器は、長い管の両端を折り曲げることによって、一般的な家屋の天井高でギリギリ収まるコンパクトな(?)ボディサイズを実現しています。
それでも、全高217センチもありますが……。
全体は5つの部品に分割されていますが、何せ大きくて重いので、一度組み上げてしまうと、容易に移動ができません。
そこで、まずは演奏する場所をきちんと決めて、そこにスタンドを設置してから、足部管〜中部管〜頭部管と順に組み立てて(建てて?)いくことになります。
ペツォルトのリコーダーは合板などの平面的な素材を駆使して非常に合理的に作られた楽器ですが、その構造上、組み立てには少々コツが要ります。
このサブコントラバスの場合も、管体をS字状に折り曲げているせいで、楽器が垂直に立ちにくく、ジョイント部分の気密性にアンバランスが生じやすくなっています。そこを理解した上で、慎重に組み立てる必要があります。
まぁ、慣れれば大丈夫です。
いざ組み上げてみると、やはりなんとも巨大です。
ですが、管体を折り曲げる設計になっているおかげで、この巨体でありながら、なんと吹き込み口は直吹きタイプ(!)。
直吹きヘッドと本体をつなぐ可動式樹脂製ジョイントパーツのおかげで、演奏者の体格にあわせて最適な高さに調整できるようになっています。これは嬉しいポイントです。
ただし、本体が巨大なので、どうやっても演奏者の視界の左半分は楽器で塞がれてしまいます。パート譜は必須ですね。
実際に吹いてみると、この楽器は、想像以上に鳴らしやすいものでした。
直吹きの恩恵でしょうか、意外と少ない息でもきちんと発音できます。
音量は控えめですが、音程はかなり正確だと感じました。
キュングのコントラバスを吹くのと同程度のブレスで、ロングトーンも十分こなせます。
息を吹き込んでから実際に発音するまでのタイムラグが短く、
キータッチも軽いので、かなり速いパッセージでも対応できます。
ただし、構造上、キーの動作音がバタバタと、大きくなりがち。
これをなんとかできないものかと、いろいろ調べてみた結果、
7mm径のレンチを使うと、キーのストロークを調節できるということがわかりました。
ストロークを短くすると、速いパッセージにさらに対応しやすくなり、キーノイズも抑えられていったのですが、やりすぎると今度は音程に影響が出るようになってしまいました。このあたり注意が必要ですね。
でも、根気良くセッティングを詰めていけば、かなり自分好みのキーストロークに調整できることがわかって良かったです。
この楽器はF管(エフかん)ですので、指穴を全部塞ぐと「ファ」の音が出ます。ヘ音記号の楽譜で一番下の線にぶらさがる「ファ」よりも、さらに1オクターブ下。およそ45Hzほど。
まさに「地を這うような」低音です。
もはや「振動」といってもいいくらい。
これをリコーダーオーケストラで吹いてみると、オクターブ上で鳴っているコントラバス(!)にサブコントラバスの音が重なることによって、低音にぐっと重厚感が増すのがわかります。
下支えの音があるのとないのとでは、その差は歴然。
パイプオルガンの低音にも似た、心地よいハーモニーに全身が包まれる、まさに「至福のひととき」を味わえます。
この快感、一度味わってしまうと、もう後戻りできなくなりそうです……。
為替の影響か、最近は輸入楽器が非常に値上がりしてしまいました。この楽器も、今購入しようとすると一体いくらになるのでしょう。
リコーダーオーケストラを頻繁にやるなら一本欲しいところではありますが、そんなに吹くチャンスが多いわけでもないですし、そもそもおいそれと手が出せる価格でもないし、でも音はいいし……やはり、高嶺の花ですね。
ご縁あって、さる高名な指揮者の方が所有されているこの楽器を、すぎやまが数ヶ月お預かりすることになりました(2024年5月現在)。
持ち主のご許可をいただきましたので、レビュー記事を掲載します。
サブコントラバスリコーダーは、コントラバスリコーダーよりも1オクターブ低い音を出す楽器です。音域が低い分、本体は太く、長くなります。
海外には、直管パイプ形状に作られたサブコントラバスリコーダーも存在するのですが、その楽器は全高が3メートル半〜4メートルにもなり、とても一般家庭に収納できる大きさではありません。
その点、このペツォルトの楽器は、長い管の両端を折り曲げることによって、一般的な家屋の天井高でギリギリ収まるコンパクトな(?)ボディサイズを実現しています。
それでも、全高217センチもありますが……。
全体は5つの部品に分割されていますが、何せ大きくて重いので、一度組み上げてしまうと、容易に移動ができません。
そこで、まずは演奏する場所をきちんと決めて、そこにスタンドを設置してから、足部管〜中部管〜頭部管と順に組み立てて(建てて?)いくことになります。
ペツォルトのリコーダーは合板などの平面的な素材を駆使して非常に合理的に作られた楽器ですが、その構造上、組み立てには少々コツが要ります。
このサブコントラバスの場合も、管体をS字状に折り曲げているせいで、楽器が垂直に立ちにくく、ジョイント部分の気密性にアンバランスが生じやすくなっています。そこを理解した上で、慎重に組み立てる必要があります。
まぁ、慣れれば大丈夫です。
いざ組み上げてみると、やはりなんとも巨大です。
ですが、管体を折り曲げる設計になっているおかげで、この巨体でありながら、なんと吹き込み口は直吹きタイプ(!)。
直吹きヘッドと本体をつなぐ可動式樹脂製ジョイントパーツのおかげで、演奏者の体格にあわせて最適な高さに調整できるようになっています。これは嬉しいポイントです。
ただし、本体が巨大なので、どうやっても演奏者の視界の左半分は楽器で塞がれてしまいます。パート譜は必須ですね。
実際に吹いてみると、この楽器は、想像以上に鳴らしやすいものでした。
直吹きの恩恵でしょうか、意外と少ない息でもきちんと発音できます。
音量は控えめですが、音程はかなり正確だと感じました。
キュングのコントラバスを吹くのと同程度のブレスで、ロングトーンも十分こなせます。
息を吹き込んでから実際に発音するまでのタイムラグが短く、
キータッチも軽いので、かなり速いパッセージでも対応できます。
ただし、構造上、キーの動作音がバタバタと、大きくなりがち。
これをなんとかできないものかと、いろいろ調べてみた結果、
7mm径のレンチを使うと、キーのストロークを調節できるということがわかりました。
ストロークを短くすると、速いパッセージにさらに対応しやすくなり、キーノイズも抑えられていったのですが、やりすぎると今度は音程に影響が出るようになってしまいました。このあたり注意が必要ですね。
でも、根気良くセッティングを詰めていけば、かなり自分好みのキーストロークに調整できることがわかって良かったです。
この楽器はF管(エフかん)ですので、指穴を全部塞ぐと「ファ」の音が出ます。ヘ音記号の楽譜で一番下の線にぶらさがる「ファ」よりも、さらに1オクターブ下。およそ45Hzほど。
まさに「地を這うような」低音です。
もはや「振動」といってもいいくらい。
これをリコーダーオーケストラで吹いてみると、オクターブ上で鳴っているコントラバス(!)にサブコントラバスの音が重なることによって、低音にぐっと重厚感が増すのがわかります。
下支えの音があるのとないのとでは、その差は歴然。
パイプオルガンの低音にも似た、心地よいハーモニーに全身が包まれる、まさに「至福のひととき」を味わえます。
この快感、一度味わってしまうと、もう後戻りできなくなりそうです……。
為替の影響か、最近は輸入楽器が非常に値上がりしてしまいました。この楽器も、今購入しようとすると一体いくらになるのでしょう。
リコーダーオーケストラを頻繁にやるなら一本欲しいところではありますが、そんなに吹くチャンスが多いわけでもないですし、そもそもおいそれと手が出せる価格でもないし、でも音はいいし……やはり、高嶺の花ですね。